先日、新中学1年生が英単語の暗記に取り組んでいる場面を見かけました。その生徒はノートに何度も英単語を書いていましたが、「この単語はどう発音するの?」と尋ねると、「わかりません」とのことでした。
実は、英単語を覚えるうえで発音を知らないことは、大きなハンデになります。
私たちの脳は、新しい情報を覚える際に複数の感覚を使ったほうが記憶が定着しやすいことが知られています。認知心理学では、情報を文字だけで処理するよりも、「文字」と「音」の両方で処理したほうが記憶に残りやすいことが数多く報告されています。
例えば、日本語でも読み方を知らない漢字は覚えにくいものです。「薔薇」という漢字を見せられても、「ばら」と読めなければなかなか記憶に残りません。一方、読み方を知っていれば、文字と音が結びつき、記憶しやすくなります。
英単語も同じです。
例えば「important」という単語を覚える場合、発音を知らなければ「i-m-p-o-r-t-a-n-t」という9文字の並びを丸暗記するしかありません。しかし発音を知っていれば、単なる文字列ではなく、一つの「言葉」として記憶できます。
実際、脳科学の研究では、言語を読むときには視覚情報だけでなく、脳内で音声情報も同時に活性化されることが分かっています。私たちは黙読しているときでさえ、頭の中では無意識に音を再生しているのです。つまり、発音を知らない単語は脳が十分に処理できず、記憶にも残りにくくなります。

さらに、発音を身につけることは単語暗記だけの問題ではありません。
英語を聞き取れない原因の多くは、「知っている単語なのに音を知らない」ことです。文字を見れば意味が分かる単語でも、発音を知らなければリスニングでは聞き取れません。また、音とつづりの関係を理解している生徒ほど、新しい単語を覚える速度が速いことも知られています。
そこで役立つのが「フォニックス」です。フォニックスとは、アルファベットと発音の対応関係を学ぶ方法です。例えば “ph” は /f/ の音になることが多い、”tion” は「ション」と発音されることが多い、といった規則を知ることで、初めて見る単語でもある程度発音を予測できるようになります。こうして発音を知るためのハードルを下げてやることで、日頃から発音とセットで英単語を覚えられるようになります。
もちろんフォニックスには例外もあり、そういうときは別の方法で正しい発音を知る必要があります。昔は発音記号を調べなければ正しい発音が分かりませんでした。しかし今はスマートフォンで単語を検索すれば、すぐに音声を聞くことができます。これほど便利な環境があるのですから、活用しないのはもったいないでしょう。
英単語を覚えるときは、
- 発音を聞く
- 声に出して読む
- 意味を確認する
- 書いて練習する
という順番がおすすめです。
「書く回数を増やせば覚えられる」と考える人もいますが、それだけでは効率的とは言えません。英単語は文字の並びではなく、本来は音を持った言葉です。発音を意識することは遠回りではなく、むしろ最短距離の学習法なのです。




























